新文化という出版業界紙がある。その7月7日号に、社長の丸島さんがこう書いている。
‐出版社の名物営業マンが続々定年を迎えている。社の顔として、返品があるという信頼関係がなければ売っていけない中で、長年本を売ってきた、彼らが辞めた後、その書店さんとの関係性が切れてしまい、後任の担当者が、書店さんに営業訪問すると、年下の書店員さんから「もう来なくていい」「忙しい」の一言で追い返されてしまい、書店さんを怖くて営業できない営業マンが増えている、弱小出版社と大手出版社で扱いの違う書店員さんも多い‐
最後のところは、ちょっと説明がいりますね。大手出版社と弱小出版社は、書店さんにとっての貢献度が違うのだから、扱いが違って当たり前と思うでしょ。
ところがどっこい、値引き販売ができない書店業界では、商品構成こそがお客様に来ていただけるポイントなのです、だから、あまり出回っていない弱小出版社の本こそが、店頭にアクセントをつけていくのに最適な本、しかも、弱小出版社の場合は、編集と営業が完全に分離している大手と違い、著者情報や編集背景にも営業さんが詳しいので、勉強にもなるのですね。
こんな出版社を味方に付けて大きくなったのがジュンク堂書店さんです。大手中小分け隔てなく大事に応対してくれた神戸の書店に、中小出版社は競うように通い、じゃけんにする大手書店にあまりいかなくなりました、まあ、ちょっと情けなさげな話ではありますが、それが、ジュンク堂さんが読書人から支持された理由ではありました。
ジュンク堂さんは突出していたけれど、他の書店さんも、作り手である出版社に対し尊敬の念を持って接してくれていたと思います。
最近は、「この本はダメ」「場所がないから、置けない」「もう、来なくていいから」という担当者が、特に若い女性に増えてきているようです。僕の場合は「場所がないから置けない」ぐらいですが、それを言われるのが怖くて、書店を回るのが嫌、という声も聞きます。
カリスマ書店員という言葉が話題になった頃から、増えてきたのかな。
新人時代、京都のある大手書店の店長に「君は、まだ僕と話ができる身分ではないのだよ」と言われたことがあります。この書店さんも無くなってしまいましたが、今、弱小出版社の営業に対して同じように思っている人が増えているのかもしれません。
書店の担当さんの仕事、今は、忙しすぎます。担当坪数も莫大に増え、入荷返品ともわけがわからんぐらい多い、そんな中、昔は一冊一冊売り上げをノートに付けていたのをレジが代行してくれる、同じように売れている本の追加注文も、レジがかってにやってくれる、仕事の重点が、仕入れて、接客して、販売するから、入荷した本を棚に入れ、あぶれた本を返品するということに変わったのかもしれません。
チェーン店本部でしか、注文しないという書店さんも増えてるしなあ。
実は、書店さん回りも好きですが、他の出版社の人と話したり、お伺いするのも大好きです。本のできる現場って、楽しそうでしょ。特に気になっている本を作っている出版社さんと出会うと、ちょっと興奮してしまいます。
丸島さんの原稿は、新刊の争奪戦だけに危惧する声もあるが、書店さん自身も出版社との交流を求めている、それが、ここにも少し書いている書店さんと出版社との大商談会「ブックエキスポ」なのだと締めている。
だとすると、僕もブックエキスポの運営員として、もう少し、両者の出会いの仕掛けを考えないとあかんよなあ。がんばります。